わさび平小屋尾根経由杓子平から穴毛谷滑降

（日付）２０１２年２月２２日（水）

（山域）新穂高温泉近郊

（メンバー）篠崎

（天気）晴れ

（タイム）新穂高温泉発３：３０→わさび平小屋４：３０→杓子平９：５０→穴下谷下部滑降→新穂高温泉戻り１１：
００

（道具）板：Ｋ２ポンツーン。靴：スカルパＴ２Ｘ。ビンディング：スイッチバック

（記録）13日の月曜日に不整脈発作が出て以来、心臓に不安を抱えてAEDとサチュレーションモニターを持ち
歩く情けない日々を過ごしていた。

　しかしついに休日と高気圧がぶつかる山スキービックデイがやって来た。しばらく運動を控えていた関係で足
の筋肉にグリコーゲンも貯まっているだろう。水曜午前限定の束の間のフリータイムとはいえこの好天を逃す事
は僕には出来ない。心臓がどういう事になるか不安はあったが、心室細動でも起こさない限りスキーなら生きて
帰れる自信はある。

　という訳で早朝未明に起床し山スキー出動を決めた。狙いはYasuhiro先生オリジナルラインであるわさび平
小屋尾根とする。この尾根なら引き返すのも簡単だし、上手く上部に抜けられればコンディション次第では穴毛
谷を滑降に使える。雪崩の巣として有名な厳冬期穴毛谷を見てみたいという危険？な好奇心もあった。

　まだ真っ暗の左俣谷林道を歩きわさび平小屋正面の急斜面に取り付く。登りだしてすぐにこれは素敵な雪を
当てたと感じた。登るにも下るにも最高の絶妙雪面だ。こんな日ならどんな山スキーでもできると思う。

　しかし最大の不安材料は心臓だった。過度の負荷をかけると心臓が狂い出すかもしれない。ここは脈拍が上
がり過ぎないように一定ペースを保ち、黙々と落ち着いて足を動かす。絶好のコンディションのお陰で脈拍は安
定し、順調に高度は上がった。

　素敵な疎林から大きな斜面に出る。素晴らしい槍穂高の景色に感動した。抜戸尾根に出る所には雪庇が出
来ていた。ここは慎重に突破しないといけない。途中から微妙に右トラバースして雪庇の小さい箇所から最後は
アイゼン歩行で尾根に抜けた。向こう側に広大な杓子平が広がる。雪は安定している。絶好の好天下、絶好の
場所に僕はいた。ここは穴毛谷を滑降するしかない。

　シールを剥がして穴毛谷に飛び込んだ。堅い雪面からパウダーを経て穴毛大滝の横に滑り込むまであっと言
う間だった。大滝から下は脇からの雪塊崩壊を気にして、できるだけ谷のど真ん中を滑る。下部の雪は湿った
重雪となり滑降は難しくなった。それでもほとんど雪崩の危険を感じる事無く何時もの巨大堰堤地帯に抜け出
る。穴毛谷は意外にあっけなく素敵な下降路を提供してくれた。これも雪面の状態が最高だったからできたに
違い無い。スキーの力は偉大だと改めて思う。